導入事例 株式会社セゾンテクノロジー

株式会社セゾンテクノロジーは、1993年にHULFTというファイル連携ミドルウェアソフトウェアをリリース、後にデータ連携プラットフォームのDataSpiderをリリースし、現在では両製品で43か国13,000社を超える企業・自治体で導入されている。SaaS系サービスが台頭してくる中で、HULFT Series、DataSpiderの活用シーンはますます増大している。各社のデータ連携のニーズにお応えするため、アプリケーションのつなぎ込みやアフターフォローを提供しているのが、今回インタビューに伺ったリンケージビジネスユニット ビジネス開発部だ。当部ではお客様に単純にパッケージとしてエンジニアリングサービスを提供するだけではない。お客様がクラウド系新規参入企業からリリースされたアプリケーションなどを導入する際には、お客様のビジネスの拡大や安定性を考え、アプリケーションとのつなぎ込みの導入支援サービスを提供している。

新しいプロダクトの導入を行い、安定したデータ連携の提供を行っているセゾン情報システムズで、ファーストアカウンティング社のAIソリューション「Remota」の導入に至った経緯をお聞きした。

課題

全リモートワークを妨げたスキャン出社と、経理処理にかかる業務負担

2014年くらいからSAP Concur(コンカー)を皮切りに、クラウド系アプリケーションの導入支援などを積極的に行っている。2020年はオリンピック開催で通勤が困難になるからテレワークに備えようというムードがあったことは記憶に新しい。そのためセゾン情報システムズではテレワーク環境に対応するため、社内の80%くらいの業務でテレワークを実現していたとリンケージビジネスユニット ビジネス開発部 クラウドサービスコンサルタントチーム チーム長 内山智之氏は話す。事実、2020年3月末の決算期を迎えたセゾン情報システムズの経理部も在宅ワークで乗り切ったという。しかし、経理部では完全にリモートにできない作業があった。原因は紙の請求書だった。紙の請求書をスキャンするためのいわゆる“スキャン出社”がどうしても全従業員の完全リモートワーク化を妨げた。

セゾン情報システムズではConcur Invoiceを導入し、間接材の請求書の経理業務を管理している。

「紙の請求書を基に各部門の担当者が、請求書の計上登録をするために、のべ人数で70名が対応しています。月あたり400枚くらいの紙の請求書を定常取引とスポット取引に分けて登録しています。クラウド系のアプリケーションなので証憑類はPDF化が必要で、出社して複合機で紙をスキャンしなければなりませんでした。」

リンケージビジネスユニット ビジネス開発部 クラウドサービスコンサルタントチーム チーム長 内山智之氏

このスキャン出社を解決するためにAI-OCRの導入を考え始めたという。

もう1つの課題としては、経理部では月締処理と毎年1回訪れる決算処理に忙殺されることが挙げられる。経理部としてはこれらの処理の定型業務をロボットなどで自動化し、捻出された人材リソースを財務戦略やIRなどの生産性の高い業務にアサインしていく方針だという。

導入のポイント

自社で活用している経理精算システムSAP Concurとの連携を優先

セゾン情報システムズでは、社内の経費精算システムにConcurを使っていた。そのため、Concurとの連携がしやすいようなソリューションを探していた。

「RemotaにはConcurとのAPI連携が既に実装されていたので取り上げました。API連携をさせるためにゼロから繋ぎ込みを作る必要がなかったのは選定理由の一つです。」(内山氏)

さらにRemotaのディープラーニングの習熟度が高いというところについても注目をしたという。

セゾン情報システムズで処理する紙の請求書の枚数は月あたり400枚。取引先によっては1枚の請求書あたりの明細行が20行にもなるケースもある。その明細を担当者が手入力している。

「月あたり400枚の請求書の入力作業をなくしたいというのが今回のAI-OCR導入プロジェクトのテーマになっています。」(内山氏)

リンケージビジネスの拡大という視点では、ITサービス事業社であるセゾン情報システムズは業務課題を解決できるソリューションを自社で導入し、製品・サービスの良さを理解することも重要だと考えている。

今回のRemotaの導入は、紙伝票の廃止を目的としたペーパーレス化、紙ベースで行われている押印業務を電子ワークフローに置き換え、業務の効率化を想定しております。このRemotaとオンラインストレージであるBOXとConcurを組み合せ、指定メールアドレスへの送信、またはBOXフォルダーに請求書のPDFデータを置くことで、データ連携ツールDataSpiderが後続の業務を自動化することを支援いたします。

これをリンケージサービスとしてワンストップで提供する予定です。

「自社への導入で、ソリューションの効果を自ら体験し、その価値をお客様にご提案することで製品サービスの良さを理解してもらうという方針になっています。」(内山氏)

効果について

70名が対応している申請業務が削減

製品サービスの良さを理解し、お客様に導入支援を行っているセゾン情報システムズでは、お客様向けのサービス提供チームが社内導入に携わるという標準フレームができている。

「今回のRemota導入は、導入検討を開始してから人がプロジェクトメンバをアサインするまで1週間もかかっていないと思います。経理のメンバーは業務視点なので、システム的な構想はRemotaをお客様向けにクラウドサービスの導入支援を行うエンジニアメンバーが参画しています。スタッフチームからの業務要件から、機能配置、システム要件、実装範囲、既存システムとの連携方式を決め、実装作業へ着手していくような役割で入っています。」(内山氏)

導入後の期待効果は、70名が対応している申請業務がなくなることだ。

「400枚の請求書の内容が、自動的にデータとしてConcurに登録されています。承認作業も極めて短時間で実行できています。期待している導入効果はこれに尽きます。」(内山氏)

さらには請求書のPDF化のための出社は激減し、Concur Invoiceへの登録作業も在宅で実現できるのでコロナ禍での期待は大きいと話す。

今後の展望

タイムスタンプの付与の要件を正しく満たすことで電子帳簿保存法に則り、ペーパーレス化を実現したい

PDFの請求書で請求業務を実行することで、紙を貰わなくていいですよという解釈もできなくはない。セゾン情報システムズの内山氏は電子帳簿保存法に対応をしていきたいと話す。

「タイムスタンプの付与が要件を満たし、正しく情報を適用していこうとなった時に、紙の請求書が送付されてくると二重保管をしなければいけない問題が出てきます。できればデータで請求書を送っていただくことと同時に、将来的には電子帳簿保存法に対応して真の意味でのペーパーレス化を図っていきたいと考えています。」(内山氏)