導入事例 BIPROGY株式会社様
BIPROGY(旧:日本ユニシス)グループは、コンピューター黎明期である1958年の創立以来、時代のニーズに応えながら60年以上にわたりシステムインテグレーターとして顧客課題を解決し、日本の情報化社会の発展を支えてきた。2022年4月、社名をBIPROGY株式会社へ変更し、世界で唯一無二のコーポレートブランドを築き、ボーダレスな発想で社会課題解決に取り組むことで、社会価値創出企業への変革を目指している。クラウドやアウトソーシングなどのサービスビジネス、コンピュータシステムやネットワークシステムの販売、ソフトウェアおよび各種システムの開発・販売などを広く手掛け、ファーストアカウンティングのソリューションを展開する認定リセラーでもある。今回、同社の経理部門の突合作業においてRemota※1を導入。同社の営業経理部 会計二室 室長 大林弘一 氏、藤田徹 氏、豊田朗子 氏にお話を伺った。
※1 経理業務に特化したプラットフォームであるファーストアカウンティングのAIソリューション。AI-OCRの機能で証憑を読み取るだけではなく、経理の一連の業務をAIにより自動化することができる。
導入背景
経理処理の少ないコロナ禍のうちに業務効率化を推進
同社がAI-OCRの検討に至った背景には2つの理由があった。1つは、コロナ禍における経費の処理件数は、最大で通常期の約半分弱まで減っていたものの、コロナ収束につれ処理件数が戻ることが想定されるため、今のうちに業務効率化を進めたいと考えたこと。もう1つは、電子帳簿保存法改正に伴い、電子スキャナ保存の適用が現実的になったことである。営業経理部室長の大林氏は、「経理業務の効率改善だけではなく、電子スキャナ保存要件である解像度やカラーのチェックなどにも活用できることがわかり、AI-OCRが有効だと考えました」と話した。
情報を読み取ってデータ化するという通常のOCR機能だけではなく、電子帳簿保存法に対応した解像度やカラーのチェックができるという点は、ファーストアカウンティングのソリューションが持つ強みである。IT企業は総じて製品選定に厳しいが、同社も例にもれず、検討には時間をかけた。いくつかのAI-OCRにおいて概念実証(PoC)を進めたが、読み取り精度や処理の煩雑さなどがネックとなり、ファーストアカウンティングのソリューションと出会うまでは、なかなか選定が進まずに苦労したという。
選定理由
経理業務に特化した強み、そして電帳法保存要件のチェックも
ファーストアカウンティングのソリューションを採用した決め手について、大林氏はいくつかの点を挙げた。1つは、同社が利用する請求書管理および経費精算システムであるConcur Invoice、Concur Expenseと連携が可能なことである。また、ファーストアカウンティングが経理業務に特化したソリューションであるため、他社製品と比較して、最も多くの読み取り項目に対応していたことも大きな理由となった。AI-OCRの読み取り精度が高かったことについて、大林氏は、「他社の製品と比較したときに、特に請求書の読み取り精度が高かったという印象がありました。例えば、他のソリューションは数字の読み取りエラーが多く出たのですが、請求書Robota※2では数字の読み取りエラーがありませんでした」と話した。また、豊田氏も、「当初は識字率が高いと聞いても、どこの会社も同じだろうと半信半疑だったのですが、実際にやってみると、Robotaは会社名も数値も見事に読み取れて不安が払拭されました」と語った。そして、解像度やカラーなど、電子帳簿保存法の保存要件のチェックにも活用できることが最終的な決め手となった。
※2 AIエンジンを提供するAPI(Application Program Interface)サービス。請求書読取、領収書読取、台紙切取、仕訳などの単機能のAIエンジンの製品群があり、Remotaには複数のRobotaのAIエンジンが組み込まれる。
経理業務に特化したソリューション他社よりも多くの請求書項目に対応し、読み取り精度も高かった
電子帳簿保存法の保存要件のチェックにも活用できる
導入
満足度の高い導入支援
当初、Robotaの導入先としては、請求書や経費を申請する「起票側」と、経費処理をする「突合側」を想定していたが、両方に導入するか、片方にするか社内で意見がまとまらず、方向性は二転三転した。ファーストアカウンティングとも何度か打合せを重ねたが、「方向性が定まらない中、色々なパターンで提案してもらえたのは本当にありがたかったです。提案変更を何度も聞き入れてくれたからこそ実現できたと思っています」と藤田氏は当時を振り返る。豊田氏も、「現場向けの説明会に、ファーストアカウンティングの営業担当やシステム担当の方が来社して説明してくれたので大変助かりました」と話した。結果として、請求書および経費精算の両分野とも、Concurで突合処理を行う経理側にターゲットを絞り、RPAからRobotaのAPIを呼び出す形でシステムを構築することになった。
ファーストアカウンティングには、カスタマーサクセス(CS)部があり、導入に対するオンボーディング支援や、利用開始にあたりヒアリングを行って設定に反映するなど、導入効果の最大化を目指して、お客様と伴走する。藤田氏は、「AI-OCRの利用は初めてだったため、導入にあたりAPIの使い方がわからなかったり、いざ動かしてみると突合結果が想定と違ったりということがありました。経理の人間はAI技術に詳しいわけではないので、我々にもわかるように説明してもらえたのが大変助かりました。そのおかげで、混乱を招くこともなく、スムーズにプロジェクトを進めることができました」と語った。
「また、問い合わせには毎回明確な回答をもらえて大変助かりました。例えば、問題がRobotaやRemotaにあるのか、或いはRPAにあるのかを切り分け、その理由もきちんと説明してくれるので、次のアクションが取りやすかったです」と、ファーストアカウンティングの導入サポートを振り返った。
RPAとAI-OCRの連携で経理業務の負担軽減を目指して
導入における一番の関心事は、経理システムConcurの画面と、証憑画像の情報をどれだけ正確に突合できるか、ということだった。「結果的には、ほとんど識字できていて、素晴らしいというのが率直な感想です」と藤田氏はいう。
また、プロジェクトでは、経理業務の負担を軽減することを意識した。例えば、RPAが一部のデータを自動検印することで、担当者の処理件数を減らし負担軽減に繋げている。「経理担当者は、RPAやAI-OCRが実行中であっても、気にせずに、これまで通り作業を行って処理を進められるように設計しています。その上で、画面入力内容と、証憑内容の突合結果で、金額に差異があれば『チェックNG』というような画面を出すことで、人手によるチェックポイントを減らし、負担を軽減しています」と藤田氏は続けた。AI-OCRのチェック結果がConcurの画面上に表示される以外は、業務処理のフローに変更がないため、新たな手順の説明なども必要なく、ユーザー側の負担も少ないという。
大林氏も、「経費の入力や突合、確認といった作業は、今後自動化されるのが大きな流れです。RobotaやRemotaはその流れにマッチしていますし、導入に際して丁寧に要望を聞いてくれたり、将来的な改善にも取り組まれたりしている点においても、まわりの会社にもお薦めできるソリューションだと思います」と話した。
課題の改善を目指して
一方、改善を目指すべき課題もあるのも事実だ。具体的には、明細行ごとに消費税率および消費税額を表示する請求書に対して、APIが消費税を突合できないという点、源泉税が取得できないという点、画像から取得できる日付が「発行日」のみの仕様であるため、同社がチェックする「利用日」の取得ができない点などである。但し、このような課題は、RPAに予め認識させておくことで、運用でカバーできているという。例えば、発行日と利用日が一致しているものについては、そのまま処理できるようにRPAを構築し、異なる場合は人がチェックするというフローだ。
また、領収書や請求書では、まれに読み取れないものがあり、追加学習することで識字率の向上を図れる。学習するためには、ある程度まとまった数のサンプル証憑が必要となるが、読み取れないものがごく例外的であるために、サンプルの枚数を用意するのが難しいという側面もあった。
さらに、RPA 1件あたりの処理速度が遅いというRPA側の課題もあり、藤田氏は、AI-OCRのサービスをより効果的に活用するためには、RPAの処理効率を上げる必要があると考える。
導入効果
業務効率と正確性の向上、社員の意識改革にも
2022年7月に導入し、まだ約1ヶ月足らずであり、効果測定の集計はこれからとなるが、感覚的には照合作業が60%程度減った印象だという。パターンを増やすなどのチューニングによって70%程度の削減を目指す。最終的に自動検印までされる請求書支払は、現時点では全体の20%程度に留まるが、証憑の保存要件の確認や、金額のチェック、支払い先のチェックなどもできているので、それ以上の効果が出ていると大林氏はいう。AI-OCRでの読み込み項目が増えてくると、自動検印できるパターンやバリエーションも増えてくるので、その点でも伸びしろが期待される。
今回の導入においては、照合作業の自動化だけではなく、RPAのフローや自動検印の条件を設計する中で、業務プロセスを整理できたこともプラスになったと藤田氏はいう。「例えば、RPAを設計しながら『どこまで細かく確認する必要があるのか』を整理していったので、理解も深まりました。導入後は、AI-OCRでまだできることがあるのではと、経理の現場で業務を改善する意識が芽生えたように思います。日々のコミュニケーションでもRobotaの話題が増えており、ロボットへの信頼や愛着のような感覚が生まれています」
定量的にも心理的にも、確実に経理側の負荷軽減につながり、働き方改革につながっているという。
照合作業の自動化、証憑の保存要件の確認、金額チェック、支払先のチェックなど、経理業務の負荷軽減を実現
業務プロセスの理解ができ、社員の意識改革にもつながっている
今後の課題と展望
ビジネス支援や戦略立案に寄与できる経理に
大林氏は、「経理部門は、Concurの検印業務のような内部統制的な機能は維持しつつ、同時に現場のビジネスを支えることも求められていると考えています。経理側の確認や検印業務を自動化できれば、その分、ビジネス支援や戦略的な分野にリソースを注力できるので、AIの更なる進化を期待しています。今後も、より一層経理会計業務に寄り添って自動化が進むような支援をしていただければと思います」と期待を語った。
今後は、自社の導入事例をもとに、反省点なども踏まえたうえでお客様にも展開したいとしている。