社外取締役インタビュー 牧野正幸 氏

目の前の顧客に価値提供できる企業こそが、大きな“社会課題解決”を可能とする。

2024年3月、ファーストアカウンティング社外取締役に就任した牧野正幸氏に、現職に就任した経緯、および当社の印象や可能性についてお聞きした。

牧野様が、ファーストアカウンティングと出会ったきっかけを教えてください。

牧野:2019年まで、国内のエンタープライズアプリケーションの領域でトップシェアを持つ株式会社ワークスアプリケーションズ(※注1)という会社の代表を勤めていました。退任後、ファーストアカウンティングに転職していた前職のメンバーから「さらなる成長のためにお手伝いいただきたい」と声がかかりました。CEOと面談をすると、“良い会社”だとわかりましたし、私がアドバイスできることがたくさんあると感じたので、アドバイザーとしてやり取りをするようになりました。

牧野様が考える“良い会社”とはどのようなイメージでしょう。

牧野:本当に良い製品かどうかは、外から製品そのものを吟味したところでわからず、“お客様にどれだけつかってもらっているか”で決まります。その点、ファーストアカウンティングは、私がアドバイザーとして関わるようになる前から、たくさんのエンタープライズのお客様にご利用いただいていており、ユーザーの満足度は十分に得られていると感じていました。それはつまり、良い製品であるに違いない、ということです。そして製品に使われているAIも、“きちんと使えるAI”だということがわかりましたし、可能性も感じられましたね。

牧野様からファーストアカウンティングに対して、どのようなアドバイスができると感じたのでしょうか。

牧野:エンタープライズを対象としたサービスは、マスマーケティングを行ったところで大きく伸びるわけではなく、地道な営業活動が必要になります。前職での経験から得た教訓となりますが、いくら高い技術力を持っていても、それだけでは足らず、やはり優れた営業が必要になってきます。その点においてファーストアカウンティングは、しっかりとした営業チームがエンタープライズのマーケットにアプローチしていました。私が自分の会社を大きくしてきた道のりと、ファーストアカウンティングがリンクしたという感覚ですね。

牧野様は、これまで多くのメディアを通じ「社会課題解決」というメッセージを発信してきました。ファーストアカウンティングはどのような社会課題を解決し、社会貢献ができると考えているのでしょうか。

牧野:社会課題の解決の最小単位は、顧客の問題の解決です。今はどの会社でも同じようなことを掲げていますが、ファーストアカウンティングは、本当に顧客の問題を解決していると実感しています。なので、この会社が競争に打ち勝つことができれば、間違いなく社会課題が解決されると確信しています。

そこで重要になってくるのが“普及”です。テクノロジー系企業のなかには、“良い製品を作ったのだから、あとは売るだけ”と考える方も多くいらっしゃいますが、その“売るだけ”というのがまた、とても難しい問題です。

多くのユーザーに使っていただくことによって意見もたくさん出てくるので、それに対するフィードバックもしやすいですし、売れていることによって研究開発に投資する額も大きくなります。このように、最初は悪い製品だったとしても、売れていくことによってだんだん製品も良くなっていきます。

この会社は最初から良い製品を持っていますが、普及を後押しするセールスと顧客満足度につながるCS(カスタマーサクセス)部門がしっかりしていたので、“これならば普及していくだろう”と確信。マーケティングやブランド力など他の部分においても他社に比べて優位性を持っているので、恐らく、“この先も勝っていくのではないか”と考えています。

ファーストアカウンティングの会社としての魅力は?

CEOの森さんは、まず自分でいろいろと考えたうえで、人に意見を求め、それをその場で採用するかどうかを判断しながら、受け止めたことはかなり速いスピードで実行されます。その点が、私の中ではとても高く評価させていただいている部分でもあります。

そして、CEOの力や思いが組織に浸透しているとも感じています。アドバイザーから社外取締役になり、取締役会にも出席していますが、各部門の方の報告を聞いている限りは“不要な人がいない”と感じています。営業責任者の方も非常に優れていますし、私の部下だったとしても納得がいく説明をされています。また、一人ひとりが“問題解決をする”という意識を高く持っていて、誰も言い訳をしません。これはどの部門も同じで、この点については社外取締役になってから気づいたことです。

課題解決に対する意識が高い会社ということですね。

牧野:あらゆる課題に対する感度が高く、解決しようとする姿勢が見られます。それは決して、小さな課題を意識しているわけではありません。未来に対して大きなほころびになる可能性があるものを早めに潰していこうとしています。例えば、顧客満足度が90%から87%に変化した場合も、他の経営者ではそこまで大きく気にしない人がほとんどだと思いますが、この会社ではその減少した3%についてとても細かく分析されています。

そういった意味では、ステークホルダーにとても信頼できる会社だと感じています。社内やマーケット上で、“気が付いたら問題が大きくなっていた”ということは彼らには起こりえません。これだけ業績が伸びていると、どちらかと言えば、手抜きの方向に進む経営者も多いと思いますが、それによってひずみが生まれ、いつの間にか破裂するということは、この会社にはありませんね。

ファーストアカウンティングという会社は、顧客に価値を提供しながら成長を続けることで、大きな社会貢献につながっていくという印象です。決まった期間内ではありますが、社外取締役として、この会社の今のフェーズでの自分の役割を全うしていければと思います。


牧野 正幸
日本アイ・ビー・エム株式会社の契約コンサルタントを経て、1996年にシステム業界に革新をもたらす「大企業向けERP」の開発・販売を行う株式会社ワークスアプリケーションズを創業。2001年に上場、CEOとして売上高500億円超の企業へと成長を牽引する。退任後、2020年に株式会社パトスロゴスを創業。人的資本経営に必要なすべてのSaaSと自由自在に即時接続ができ、同時に大手企業に必要な給与・労務・人事業務ともつながる共創型HRシステムの構築、人材の発掘を提供し、日本企業のデジタル化に貢献している。

(注1)株式会社ワークスアプリケーションズ
1996年に牧野氏が創業した企業。氏はCEOとして2019年まで同社を率いた。エンタープライズ領域において数少ない国産ベンダーとして、人事給与システム「COMPANY」をはじめとしたERP製品を提供し、マーケットシェアNo.1を獲得。19期連続増収を実現し、売上高は約500億円に達した。